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LILIUM

趣味の記録保管庫

長い休日

Books

『小説野性時代』より

米澤穂信著『長い休日』の感想です

小説 野性時代 第120号 (KADOKAWA文芸MOOK 122)

小説 野性時代 第120号 (KADOKAWA文芸MOOK 122)

 

 ※ネタバレを含みます

 

物語は省エネ主義の奉太郎がなんだか絶好調で身体動かしたくなるという天変地異の前触れのようなかんじで始まります

 

散歩に出た奉太郎は本を読むとこを探しに荒楠神社へ

そこでその神社の娘である十文字かほさんに会い、なんとそこには千反田もいました

3人で生き雛祭の写真を見るシーンめっちゃにやにやした…

奉太郎が千反田に見惚れてるとこ激写されてて最高…最高…

ここで時系列が奉太郎が千反田への恋心を自覚した後だと知りテンションがビビるほど上がりました

 

さて千反田が十文字さんの家にいるには祠のお掃除のためでした

かほさんは別の用事を済ませねばならぬので千反田と2人で掃除をすることに

掃除中、千反田はなぜ奉太郎が省エネ主義になったのかを知りたくて話は奉太郎の小学生時代に

 

小学6年生のころ、花壇の水やりの係になった奉太郎

二人一組だった奉太郎の相手は田中さん(仮)

田中さんは家庭の都合で一時的にバス通学になり、距離や時間から放課後残ったりするのが難しくなりました

先生に頼まれ、そこまで大変なことでもないのでひとりで係の仕事をするのを承諾した奉太郎

 

そんなある日の放課後、田中さんのランドセルが紛失

担任と奉太郎と田中さんで探すと忘れ物として職員室で預けられていました

ランドセルの中身を確認し、大事な文房具を見て安堵する田中さんを見て奉太郎は気付きます

通学に時間がかかるのに放課後遊んでいたこと、バスギリギリの時間だったと思ったから手伝ったのに、田中さんはランドセルに入っているはずのバス代のことを何も心配してなかったこと

田中さんは今バス通学ではなくなり、係の仕事をさぼっていたこと

さらに担任の顔を見た奉太郎は、そのことを担任も知っていたことを察します

 

田中さんの家庭の事情は奉太郎には関係ない、でも同じ係だし少しくらい助け合ってもいいじゃないか、という気持ちに付け込まれていたことに気付いてしまった奉太郎

 

それからというもの、奉太郎はクラスに要領よく立ち回って面倒を押し付ける人間と、押し付けられている自覚なく快諾して引き受ける人間がいること、しかも自分は後者だったことを実感してしまいました

 

引き受けて何か損をしたとか、周りばっか楽してるのが腹立つとかではなくて、自分が便利に使われていたことが悲しかった当時の奉太郎

感謝されたかったわけじゃない、ただ自分が何でも文句言わずやる人間だと教師からもクラスメートからも馬鹿にされてるとは思わなかった

馬鹿に思われてるのは構わないけど、つけ込まれて利用されるのは嫌だ

だからもう本当に自分がやらなきゃいけないことじゃなかったらやらない

 

これが奉太郎の「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手身近に」というモットーを持つきっかけでした

 

このことを姉に話した奉太郎は姉から「長い休日に入るのね」と言われます

「きっと誰かが、あんたの休日を終わらせるはずだから」とも

 

これさ~つまり千反田なわけだよ

拗ねた小学生が引っ込みつかなくなって今更モットーも取り下げられないくらいに慣れたころ千反田と出会ったんだよ

千反田の気になりますはやらなくてもいいことだけどやっちゃって

それこそふくちゃんがビックリするほどにさ~~

奉太郎の傷付いた心が性根まで腐らせる前に千反田が奉太郎の休日を終わらせにやってきたんじゃん~~!!!

最後の一文で大興奮だよ!!運命じゃん!?付き合えば!?!?ってなるでしょそりゃ

 

奉太郎の気持ちはすごくわかるよ

もう本当にすごくわかる…

奉太郎は小6で気付いたけど私は大学生になるまで自分が周りに都合よく利用できる存在だとつけ込まれていたことに気付かなかったし、気付いた時はすごく腹が立って悲しかった…

でももう慣れというかそういう性格だったから断るのも罪悪感があって今はもう割り切れたけど当時は本当につらかった…

全く話さないクラスの人たちが試験前だけ友達面してノートとかプリントをかっさらいさらにそれが私の知らないところで全く知らない人の手にまで渡ってたりしてな

 

自分語りになってしまったがとにかく奉太郎の気持ちはすごくよくわかった

愚者のエンドロールで入須先輩にすごい憤ってたのも自分が気付かないうちに利用されてたわけで、これを読んだ後だとこう思うものがあるね

そして千反田がその悲しさを終わらせに来てくれたのが本当に本当に嬉しかった

とてもいい読み切りだった…